弊ゼミでは次のテキストを指定しています。卒業論文に取り組む際には、このテキストを何度も読み、参照しながら執筆してください。
井下 千以子 (著)『思考を鍛えるレポート・論文作成法 [第3版]』(慶應義塾大学出版会)2019
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作文と論文(レポート)の違いは、単に「文章の長さ」だけではありません。
高校までの作文は、読書感想文など、自分の感じたことを書くものだったかもしれません。しかし大学生に求められるのは単なる感想ではなく、根拠ある意見・主張です。
ある問題に対して、自分はどのように考えているのか。その考えの正当性はどのような根拠・データをもとに示せるのか。その根拠から導かれる意見・主張は論理的に導かれるものであるか。…などなど、こういったことが評価されます。これらを丁寧に書こうとすると、文章は自然と長くなります。
根拠とするデータや資料は、信頼性が高く、読者(先生)が参照できる情報源であることが求められます。匿名のSNSやブログなどは、内容は勉強になることもありますが、どこの誰が書いたのかが分からないという点で信頼性に欠けるので、レポート・論文の参考文献としてはふさわしくありません。また、テレビ番組やライブ動画など、一定期間しか参照できない情報源も、読者が資料を確認できないので適切な資料とは言えません。
さらに大学生のレポートや論文には、客観性も求められます。たとえば調査やデータ分析を用いる場合、他の誰かが再現しても同じ結果が導けるように、手順やデータの扱い方は詳しく書く必要があります。資料分析の場合も同様に、資料のどの記述をどう解釈すると自分の主張が導けるのかを、丁寧かつ論理的に記述する必要があります。
よりよい論文やレポートは、新規性・独自性(オリジナリティ)も大事な要素となります。あなた独自の視点、あなた独自のデータや資料があると評価は高くなります。たとえば卒業論文では、独自に調査・取得したデータであるとか、データとデータの組み合わせ方が独自であるとか、あなたしか経験していないことを根拠としているとか、そういったことも評価のポイントとなります。
ただ、(大学院へ進学しない)学部生の卒業論文は、研究者が書く専門的な学術論文と比べれば、このオリジナリティに関しては甘めの評価となることも多いです。まずは信頼性の高い資料・データを集めることと、論理的な文章を書くということに注力してください。
主張を裏付けるための根拠として、他者の資料からデータや記述を挙げて論じることは推奨される。しかし、それが自分で得たデータや、自分の意見であるかのように書くことは固く禁じられている。データや記述は他人の著作物であることを明記しなければならず、これを引用という。それを意図的に書かなかったり、意図していなくても書き忘れてしまうと、これは引用とは言わずに「剽窃(ひょうせつ)」と呼ばれ、厳しく罰せられる。俗語としては「コピペ」ともいう。
しかし、引用の作法さえ守れば安全、というわけではない。正しい引用は、次のルールを守る必要がある。
その資料が公表されていること
引用部分と自分の意見は明確に区別できること
自分の文章を「主」、引用部分を「従」とする関係、バランスであること
課題や研究など、正当な目的があること
出典情報が明記されていること
公表されていない資料は引用できないし、引用箇所がどこからどこまでなのかがわかるように書き示す必要がある。資料の出典情報は漏れなくきっちり書かなくてはならない。このあたりはテキストを参照しよう。
3の主従関係については、レポートや論文のほとんどが引用箇所の寄せ集めであってはならない、ということである。あくまで論文はあなたの主張や意見をメインとして執筆されるものであって、資料を寄せ集めた「資料集」のような文章であってはならない。たとえ正しく文献情報を示していたとしても、主従関係が逆転しているとルール違反になりえるので気をつけよう。
起きたことは「事実」、それを解釈した内容は「意見」である。しかし言葉の言い回しだけではそれが明確に見分けられないことがあります。
たとえば「前年よりも売上は向上している」は、データから明確に示せる「事実」です。しかし「あの人はきれいだ」とか「この製品は便利だ」といった文は、客観性がなく、人によって異なる感じ方がありえますから「意見」です。
事実と意見の見分け方は、論文を書くときにも意識してほしいですが、資料を読むときにも意識しましょう。それは著者の意見として書かれているのか、それとも客観的事実として示されるものなのか。これがわかると、引用の仕方も変わってくるでしょう。
書き分け方としては「~だと考える」のような文末表現にすると、あなたの意見であることがわかりますが、多用すると読みづらくなりますので、ほどほどにしましょう。
論理的な文章では、序論・本論・結論の三部構成を基本とします。
序論では、問題の背景や研究の目的を示します。第1章にあたります。
本論は、論文の中身です。弊ゼミでは第2章を関連研究、第3章以降を本題の展開(調査系論文の場合は調査の手順、調査の結果、考察など、資料分析系論文の場合は各資料の概要、考察など)とします。
結論は、論文のまとめです。改めて問題の背景と目的を簡潔に示し、本論ではどのような根拠のもとに何を主張したのかを概説します。さらに「今後の課題」「今後の展望」として、この論文でのアプローチの限界(データの不足や調査方法の限界など)、論文で扱いきれなかった論点(こういう議論は含めきれなかったが含めていたらもっと良くなったと思うようなこと)を書くと、研究論文らしくなります。また、読者である先生に対して、この論文が取り上げる範囲がどこからどこまでなのかが明確になります。
以上の構成を基本としますが、各自のテーマによってはこの章構成に従わない場合もありますので、あくまで参考までとしてください。
論文の末尾には参考文献(引用文献)のリストを挙げましょう。書き方についてはテキスト5章を参照してください。
文章をよりよくするために見直すことを推敲といいます。「”書き言葉”で書く」などの基本を抑えつつ、読みやすい文章になるように見直しましょう。
段落の先頭は1字分の字下げをします。そして、1つの段落には、1つの話題(トピック)だけ書きましょう。時々、1000文字近く(それ以上のことも!)の段落を書いている学生がいますが、1つの話題に留めるならばそんな段落はできるはずがありません。話題が転換するタイミングで新しい段落をつくりましょう。逆に、非常に短い段落を作りがちな学生もいます。段落は複数の文で作られます。1つの文や1~2行で段落を作っている場合、もう少し詳細に記述できないかを検討しましょう。
言い回しが論文として適切であるか(若者言葉や口語表現になっていないか)、という点はもちろんですが、言葉の選び方や組み合わせ(コロケーション)としてより良いものがないかを考えてみましょう。たとえば「学校へ行く」という表現は誤りではありませんが、文脈によっては「学校へ通う」のほうがよいときもあるでしょう。
それから、専門用語や流行語、略語など、読み手に伝わらない可能性がある言葉は、説明を加えましょう。本文中でもよいですし、注釈(脚注)でも構いません。
さらに、同じ言葉が繰り返していると単調で退屈な文章になります。特に、「~と思う」「~と考える」、「~のような」「~らしい」「~といわれている」は、学生が繰り返しがちな表現です。省いても意味が変わらないようなら削ってみましょう。
日本語は主語が省略されていても通じてしまう言語です。特に一文が長いと、書いている自分も主語がどこで、何が述語なのかを意識できていないことがあります。
たとえば、「川で洗濯していると、ドンブラコと流れていました」だと、誰が(何が)流れていたのか不明です。人が流れていたのか(おばあさんが溺れている)、それとも物が流れていたのか(大きな桃が流れていた)、主語は明確にしましょう。
よくあるのは、主語と述語の対応がおかしい文です。たとえば、「この政策は、少子化と賃金アップを掲げている」という文は誤りです。これだと、政策として少子化を目指していることになります。正しくは「この政策は、少子化対策と賃金アップを掲げている」でしょう。あるいは「少子化と賃金の低さを問題視し、この政策が掲げられた」のように、問題としているものを明文化してもよいでしょう。
「これ」「それ」といったものを指示語といいます。文章が長くなってくると、指し示す語句が不明確になることがあります。指すものが遠い場合は指示語を用いず、改めて書くようにしましょう。
「~ない」という否定語を重ねて書く「~なくはない」のような表現を二重否定といいます。たとえば「~しない人たちが居ないとは限らない」は「~しない人たちもいる」と置き換えることでスッキリします。ニュアンスや文脈にもよるとは思いますが、できるだけ率直な表現に置き換えたほうが読みやすいので、検討しましょう。
学生としては「ですます調のほうが字数が稼げる」という下心があるのかもしれませんが、大学でのレポートや論文では原則「である」調です。また、つい「ですます」調と「である」調が混在してしまうことがありますので、よく見直しましょう。
書き言葉で格調高い文章を書こうとしているからなのか、やたら漢字を多用する学生が稀にいます。明確なルールはありませんが、接続詞や副詞はひらがなで書くことが多いです。たとえば「然し」「其れから」「或いは」「従って」「且つ」「又は」などはひらがなで書きます。「~位」「~事」「~所」「~物(者)」などもひらがなのほうがよいです。
「すごく」「とても」よりも「非常に」「きわめて」のほうが固い表現になり、論文らしい。このような言葉の置き換えは、テキスト5章を読んで、見直しましょう。
私からのコメントで、よくあるものをまとめました。私の添削を受ける前に自分で見直して、可能な限り減らしましょう。
YouTube「文章表現の技法―推敲の重要性について」(慶應義塾大学アカデミック・スキルズ)も視聴し、参考にするとよいです。
文献を参照して述べた箇所は必ず引用が必要です。本文中に引用であることを明記しましょう。さらに卒論の末尾の参考文献リストで文献情報を記しましょう。
図表の前後には1行空けます。「(空行)-(図表と図表のキャプション)-(空行)」とします。ただし、直前直後で新しいページに変わる場合は空けません。
一文が3行以上に渡っている場合は短くしましょう。1行は40文字ですから、100文字以上…。もはや主語が行方不明、係り受けも迷子です。
用語の意味がわからないのか?文の構造が悪いのか?さっき言ってたことと違うなど、論理的に意味不明なのか?どれでしょうか。
章が変わったのに唐突に語り始めないでください。この章では何を書くのですか?論文全体では「序論・本論・結論」の三部構成ですが、章単独でもある程度読めるように、章の中でも「序論・本論・結論」の構成で書いてください。
テキスト5章5節「わかりやすい文章を書くために」を参照し、口語表現を論文に適した日本語表現に直しましょう。「けど」や「とても」は口語表現です。
段落の先頭は1字分字下げします。スペースキーで下げてもよいですが、Wordの段落設定を使って字下げすると、字下げし忘れにくくなります。
段落の先頭は1字分下げますが、2字分下げている箇所がないか、チェックしましょう。
文が長すぎると、主語が不明確になりがちです。日本語は主語を明確にしすぎると、「くどい」と感じますが、不明確だと意味がわからなくなる原因にもなります。
英語で「能動態」と「受動態」って習いましたよね。日本語でも「する」と「される」という表現がありますが、これが逆転してしまった文をよく見かけます。特に、文が長すぎて主語不一致となるケースは多いです。
体言止めとは、名詞や体言(「〜こと」、「〜もの」等の名詞句)で終わる文体のことです。これは避けてください。論文では必ず文の形にします。
「1パラグラフ1メッセージ」です。英語でも「パラグラフ・ライティング」と言いますね。1つの段落には1つの主張としてください。詳しくはテキスト5章4節「パラグラフの書き方」を読むこと。
論文は「です・ます調」ではダメです。おかしな字数稼ぎはしないように。また、「だ」で終わる文末表現もできるだけ避けてください。
行を空けるべき箇所は、図表の上下のみです。他は空ける必要はありません。章節項には適切なスペースが空くように、テンプレート内のスタイルで設定しています。もし本文の流れで行を空けたくなったら、節や項を利用してください。
例えば、「~できる可能性があるのではないかと考える」といった文末表現…書きがちです。でも「~の可能性があるだろう」でも良いのでは?
「~と思う」「~と考える」といった表現は、英語では"I think~”となりますが、「日本人はそんなに思慮深いの?と」不思議がられるのだとか。
「思う」や「考える」という表現は、省略できるならどんどん省略しましょう。おそらくほとんどの箇所では言い切り表現で十分なはず。
「思う/考える」に変わる言葉選びも検討してみましょう。
もっとスッキリと短い表現を検討してください。これも一つの推敲です。書き上がった後の見直しでは注意して読んでみましょう。
初めて登場する専門用語は略称・略語にしないでください。たとえば「IoT」といきなり書くのではなく「Internet of Things(以下、IoT)」というように括弧書きで以降使用する略称等を書き示します。
学部から配布されている「卒論等作成の手引き」は読みましたか?隅から隅まで何度も読みましょう。Wordでどうすればいいの?という項目があるかもしれません。ゼミで配布したテンプレートファイルを使用すれば概ね手引きに沿った書式になります。
ゼミ中に配布したWordの卒論テンプレートの使い方です。Wordの「スタイル」と「目次」の機能について説明しています。
配布したテンプレートでは、「引用文」というスタイルがあります。長い引用文ではこれを使ってください。
貼り付けオプションより「図」を選択して貼り付けることで、
グラフを画像化してWordに貼り付けることができます。
不用意な事故を防げるのでおすすめです。
卒業論文の最終版はPDFファイルで提出します。
WordからPDFファイルに変換する方法を知っておきましょう。
「卒論等作成の手引き」を隅々まで読んでください。
表紙の次のページは白紙とします。
要旨は1ページに収めましょう。このページに限り、行間は詰めても構いませんので必ず1ページに収めます。500~800字を目安としてください。
目次は偶数ページとします。奇数ページの場合は、目次の後に白紙を1ページ挿入してください。
目次は提出直前に「すべて更新」をクリックしてください。
本文の後には「謝辞」、「参考文献」が続きます。「付録」がある場合は参考文献の後に掲載し、目次にも反映させてください。
図のキャプションは図の下に、表のキャプションは表の上に書きます。
図表番号は通し番号でも良いですし、章番号を含めて「図3-1」としても構いません。番号のズレに気をつけてください。
「図1のように」や「~である(図1)」というように、本文中で必ず言及してください。
図表とキャプションは同じページになるようにしてください。
大きな表である場合は、できるだけ1ページ内に収まるように工夫してください。どうしても収まらない場合は相談してください。
謝辞はインターネット上のサンプルを参考に、各自で考えてください。「卒論 謝辞」などで検索するとよいでしょう。
副査への謝辞はフルネームで、必ず含めてください。
調査を実施した場合は調査対象者への感謝を述べると良いでしょう。
ゼミのメンバーや家族などにあてて書く人もいます。あなたの学業を支えてくれた人に感謝を述べてください。
参考文献中にURLがある場合は、以下を確認してください。
URLが正しいかどうかをもう一度確認してください。
リンクへアクセスし、リンク切れになっていないかを確認しましょう。
閲覧日は提出締切日の1週間以内の日付にしてください。万が一、リンク切れが起きていた場合は、最後にアクセスを確認した年月日にします。
最終版はPDFファイルで提出となります。
発行したPDFファイルをもう一度確認してからアップロードしてください。
「目次」の中に「エラー!」と書かれていないか。ある場合はWordに戻り、目次を「すべて更新」してからPDFを作り直します。